今日の献立
本来なら念頭のご挨拶を述べるところですが、1月1日に起きた能登半島地震で沢山の方が被災されました。
被害に遭われた方々には謹んでお悔やみとお見舞いを申し上げます。
旧年中は大変お世話になりありがとうございました。
本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
さて今回は、毎年恒例のおせちの解説をしたいと思います。
やはりといいますか、今回もかなりの値上げで仕入れが難しかったです。
ただ、昨年よりかなり値上がりした物もあれば、少し安くなった(それでも平年に比べれば高いのですが)物もございます。
本当に何でも値上がりする年末の仕入れは難しいものがあります。
[干し数の子]
大変希少なため、毎年夏が終わる頃には発注します。
干し子(通常の塩蔵の数の子を塩子といいます)と呼ばれる幻の数の子は、恐らく百貨店にもあるかないか。
干し子は国産のニシンの卵を天日で干したものです。
カチカチの状態の乾物なので、塩水を毎日交換して5日ほどかけて戻します。
戻したら薄皮を掃除し、酒で洗ってたっぷりの出汁に漬け込みます。
「数の子は音でたべるもの」と言ったのはかの北大路魯山人。
確かに数の子の良し悪しはその歯ごたえにあります。
最高級の北海道産塩子の約10倍はする干し子は最高ランクのスーパー数の子です。
[京丹波黒豆]
丹波篠山から毎年送っていただく黒豆。
当店では大粒の新豆を仕入れています。
乾物ですから、一昼夜かけて米の研ぎ汁で戻し、三日三晩極弱火で炊きます。
壁に投げてくっつくくらい柔らかくなったら、砂糖と醤油で味付けします。
砂糖は赤ザラメを数回に分けて投入。
黒豆は急な温度変化を嫌います。
シワがよらぬようコトコト弱火で煮て、空気に触れないようにします。
仕上がりには都合5日ほどかけます。
昨今は圧力鍋でサッと仕上げる方も多いようですが、私は時間が美味しくしてくれると信じています。
[イクラ]
昨秋は前半は鮭がよくとれ、筋子(イクラの原料)もたくさん出回りました。
ただ後半は急に不漁となり、鮭が不足する事態に。
川を登った鮭の卵は大きいのですが皮も固く口に残ります。
イクラを作るには、川を登る前の海にいる鮭の卵で作るのが美味です。
やや小粒ですが皮も柔らかく、ねっとりとしています。
高級珍味のイクラですが、今年も醤油漬けを盛り込みました。
[車蝦]
活けの車蝦の背わたを取り、沸騰した出汁に酒をきかせてサッと煮ました。
加熱が甘いと後々黒くなりますので、色鮮やかにしっかりと艶煮にします。
活けの車蝦も年末は特に高価になりますね。
[伊勢海老]
縁起物としてはこれほど花のある食材も少ないですね。
お祝いの席では伊勢海老か真鯛が最上です。
本場伊勢産の伊勢海老。
輸入物は色も薄く味も淡白ですが、近海物はしっかり赤い。
これも酒をきかせた出汁でやや長めにしっかりと加熱します。
プリプリした身は食べごたえがありますね。
[鮑]
活けのアワビを酒蒸しにしました。
鮑をサッと洗い、酒をふって4時間蒸し煮込みにします。
お刺身にすればコリコリする鮑も長時間蒸すことによって、驚くほど柔らかくなります。
固い鮑も良いのですが、こちらの方が万人受けして喜ばれます。
[蒲鉾]
今年もいづ萬さんから送っていただきました。
京都一の老舗のかまぼこ屋さんです。
ハモを贅沢に使った蒲鉾は、やはりお正月には食べたくなります。
味はもちろん、歯ごたえも最上です。
[唐墨]
日本近海の鯔(ボラ)の卵で作ったカラスミです。
日本三大珍味の一つの超高級珍味。
ねっとりとしてコクがあるその味わいは、酒の肴としては最上。
作り方は塩をして酒で洗い天日で干すだけなのですが、毎日裏返したり、かなりの手間ひまがかかります。
高級なのですが、毎年欠かせない一品です。
[海胆]
ウニも日本三大珍味です。
厳密に言う日本三大珍味とは、尾張の口子、野母の唐墨、越前の海胆ですが、特に年末は恐ろしく高くなります。
海胆に塩をして蒸し器で蒸します。
こちらは短時間で。
あまり蒸すと逆に固くなります。
海胆は蒸すと水分が取れてより濃厚になります。
[スモークサーモン]
特に味がよい紅鮭をスモークしました。
冷温で燻製することにより、よりサーモンの味が際立ちます。
ねっとりして風味よいスモークサーモンです。
[叩き牛蒡]
私が幼少の頃、祖母が作っていたのを覚えています。
細めのゴボウをそのまますりこ木で叩き、醤油味の煎った白ゴマで和えていたような…
ゴボウは子供には固く、ガリガリと必死に噛んでいました。
叩くと味染みが良いのですが、今の料理屋ではあまり叩きません。
食べやすく切って、味つけした煎ったゴマで和えますが、やや硬めに茹でた熱々のゴボウをゴマの中で混ぜて馴染ませます。
いつもは薄味だったのですが、今年は少し濃い味加減で存在感を出してみました。
酒の肴に一切れ…といった感覚です。
[真鯛の昆布〆]
年末は睨み鯛の需要から特に値上がりする真鯛。
養殖物なら沢山ありますが、天然物は数に限りがあります。
にらみ鯛とは鯛の姿焼きのことで、正月三が日は床の間に置いた鯛に手をつけてはいけません。
そこで三が日の間はチラチラと見る(にらむ)ことから、睨み鯛と言います。(苦笑)
話が脱線しましたが、今回は睨み鯛ではありません。
近海天然物の真鯛を捌いて柵にします。
薄塩を当てて天然真昆布で包み、ラップでくるんで冷蔵庫で1日寝かします。
昆布から出した鯛の身を、へぎ作りにするのですが、締まった身はねっとりと包丁に絡み、中々切りにくい!汗
尺一寸の柳葉包丁をいっぱいに使い、全部を切るのにかなりの時間を要しました。
しかし昆布の風味と締まった真鯛の身は、お刺身以上に味があります。
[堀川牛蒡和牛射込]
一昨年はべらぼうに高価だった堀川ゴボウ。
1本五千円はしていました。
今回は京都産が手が届く範囲で仕入れられました。
私の手首ほどもある太い牛蒡はすごい存在感です。
まずタワシでゴシゴシ洗い、ある程度の長さに切って米糠で湯がきあく抜きします。
更に熱湯で湯がいた後に出汁で炊いて味つけします。
黒毛和牛を少し叩いてすき焼き風に煮込みます。
どちらも水分を切り、堀川牛蒡の穴に和牛を詰め込みます。
定着するまで少し冷やして食べやすく切ります。
堀川牛蒡の中心には大きな穴が開いていて、そこにミンチやすり身を詰め込んだりします。
もちろん牛蒡そのものでも美味しいのですが、詰め物をするとまた違った楽しみがありますね。
[銀鱈味噌幽庵焼]
毎年焼き魚には鰆を使います。
しかし今回は初めて銀ダラを使ってみました。
味噌漬けの定番の銀鱈。
深海魚で水分が多く、味噌に漬けると身が締まって良い塩梅になります。
ただ身がもろく焼くのに神経をつかいますが、味噌漬けにすると大変美味な高級魚です。
[穴子照焼]
アナゴはよく鳴門煮にするのですが、今回は近海アナゴを照り焼きに。
穴子を開き、タレで付け焼きにしました。
[鶏松風]
鶏のミンチを二度挽きし、魚のすり身や卵などを混ぜてオーブンで焼きます。
中にはレーズン、松の実を入れて、天にはケシの実をふるのがお約束。
表面は賑やかな割に裏は寂しい、裏さみしい松風の音…と洒落てこの名があります。
[厚焼き玉子]
濃厚卵の卵黄を使い、魚と海老のすり身を混ぜた贅沢な玉子焼きです。
厚めの形に流し込みオーブンで焼きます。
[狭腰の生寿し]
サゴシとは鰆(さわら)の幼魚です。
皮ごと食するキズシは鰆では皮が厚すぎるので小さな狭腰を使います。
特に関西では狭腰の生寿しはお正月には欠かせません。
鰆類は身が弱く高鮮度が求められます。
狭腰を三枚に下ろし、ベタ塩をして水分を抜きます。
酢水でサッと洗い、昆布を入れた合わせ酢に漬け込みます。
切れ込みを入れながら一口大に切ります。
[茗荷]
ミョウガは色が綺麗なのでよく使います。
これも需要があるのか年末には値が上がります。
茗荷の固い葉を取り、サッと湯がきます。
すぐにザルに上げて塩をふります。
粗熱が取れたら一晩甘酢に漬けます。
茹でたてはくすんだ色ですが、甘酢に漬けると色鮮やかになります。
[酢蓮根]
レンコンの穴は先を見通す縁起物とされ、年末は高くなります。
蓮根にもランクがあり、最上の阿波蓮根を仕入れます。
皮をむき、酢水にさらしてアク抜きします。
厚めに切り、サッと湯がいてザルに取って塩をふります。
粗熱が取れたら甘酢に漬けます。
蓮根はアクがあると色変わりするので、なるべく良い物を仕入れます。
[カリフラワー]
料理に白い物が入ると綺麗ですね。
しかし白い物は少なく、カリフラワーは持ってこいです。
ただ、今年は割と買いやすかったのですが、すごく高価な年もあり、毎年入る訳ではありません。
カリフラワーを小さな房に切り、サッと茹でます。
他と同じようにザルに取り、塩をふって甘酢に漬けます。
爽やかな酢の物は、こってりした物が多いおせちでは箸休めになりますね。
[竹の子]
生の竹の子もやはり欠かせません。
真空パックや缶詰では香りや食感がまるで違います。
それはあの合馬のものとて同じです。
生の竹の子を米糠で湯がきます。
竹串が通るぐらい柔らかくなったら、そのまま置いて冷まします。
但し、あまり柔らかくすると竹の子本来の食感が失われますので程々に。
冷めたら皮をむき、綺麗に掃除して水にさらします。
出汁を沸かし一度目の煮炊きです。
ここで竹の子の水分と出汁を入れ替える訳です。
更に翌日に出汁を入れ替えて二度目の煮炊きです。
こうすることで傷みにくくなります。
味つけは味醂と少量の白醤油で、竹の子の持ち味を引き出します。
[冬菇]
どんことは原木椎茸を天日で干したものです。
収穫まで長い年月を要し、高価になります。
当店では丸のまま盛り込みたいので中型を使います。
サッと洗った冬菇に水をはり冷蔵庫で戻します。
よくぬるま湯で戻す方もいますが、冷水でゆっくり戻すと持ち味が生きます。
肉厚の冬菇は戻しに二日はかかるでしょうか。
椎茸の石突をとり、戻し汁と酒で煮ます。
椎茸に水分が多いので、やや濃い目に味つけし、コトコト長時間煮て味を含めます。
冬菇は肉厚で食べごたえがありますね。
[慈姑]
クワイも芽の出る縁起物とされ、年末のみ出回ります。
農家も後継者不足で廃業が多く、クワイも年々高価になります。
大きなクワイを使うと場所を取りすぎるので豆クワイを仕入れます。
クワイを綺麗に掃除して、サッと油で揚げました。
素朴な見た目ですが食べやすいですね。
[金時人参]
これも冬のみ出回ります。
細いものはお雑煮にも使います。
西洋人参に比べて赤みが濃いので引き立ちますね。
時間をかけて濃い出汁で、色を鮮やかにしたいので白醤油を使います。
[薩摩芋]
昨今は安納芋や紅はるかなどのねっとり系が人気なのだとか。
確かに焼き芋には良いのでしょうが、煮物にはホクホクした金時芋が美味しいですよね。
鳴門金時を輪切りにし、砂糖とクチナシの実を入れて甘露煮に。
クチナシの実を入れると色鮮やかに染まります。
[玉蒟蒻]
昔のコンニャクの復刻版です。
昔ながらの製法に頑固にこだわり、昔の味を再現した蒟蒻です。
独特のコリコリとした食感と、味染みの良さが特徴です。
下茹で不要とのことですが、一応湯がきます。笑
出汁を調味して、長時間煮て味を乗せます。
煮物全般に言えますが、おせちは保存性を考えて出汁の1割の酒を合わせて炊いています。
[鯛の子]
通称たいの子。
正体は生のタラコのことです。
大阪や京都では昔から生の鱈子を鯛の子と呼びます。
これも冬限定の食材で、オフシーズンは塩蔵の鱈子として出回ります。
鯛の子を食べやすく切り、流水にさらして血抜きします。
こうすると味が格段に良くなります。
甘めに調味した出汁に生姜をきかせ、崩れないように弱火で煮含めます。
ふわっとして粒がハラハラと解け、なんとも言えない食感です。
[鰊甘露煮]
今年は北海道のニシンが入ると言われたので仕入れました。
国産は珍しいですね。
鰊の甘露煮といえばにしん蕎麦を連想します。
小骨を取り除いて掃除した半乾の鰊を番茶で戻して水にさらします。
酒水を濃いめに調味し、約4時間煮込みます。
こってりとした鰊は柔らかく食べやすいですね。
[絹莢]
色合いを考えるとおせちも青い物が必要ですが、青も少ないですね。
当店では今年は菜の花とこの絹さやを使います。
絹莢も食感が大事ですからサッと茹でます。
そのままザルに上げ、粗熱が取れたらお浸しにします。
絹莢は足が早いので、一番最後の30日の朝に作ります。
[菜の花]
最後まで手こずったのがこの菜の花です。
貴重な青みと春を感じさせる野菜。
菜の花はすぐに黄色くなるので青いものが少なく、数も少ないので仕入れに手こずりました。
菜の花も足が早く最後に作ります。
そのほろ苦さは爽やかさを感じますね。
[銀杏]
イチョウの実のギンナン。
小さく手間ひまが掛かりますが、毎年入れています。
まず鬼殻を割り、更に薄皮をむきます。
綺麗に掃除したら、酒と塩で一気に煮ます。
コリっと少し苦味があり、アクセントになりますね。
[栗渋皮煮]
秋に仕込んで瓶詰めにすると安価で作れますが、当店では氷温で貯蔵した栗を年末に作ります。
渋皮煮は鬼殻をむく時に、渋皮を傷つけないように非常に神経を使います。
傷がつけば煮込む最中に崩れてダメになります。
数回アク抜きをし、コトコト長時間煮込みます。
市販のものより甘さ控えめに仕上げています。
以上。
多忙の為、写真を撮り忘れた食材が多々あります。
特に入荷が遅かった物とか…汗
今回も仕入れに苦労した年でした。
しかし普段は使えない高価な食材に触れられて、以前の料理屋の頃を思い出しながらしんどいながらも楽しく仕事ができました。
今の私にとっては夢のような時間を与えて下さり、おせちをご注文いただいた皆さまには感謝しております。
本当にありがとうございました!
追伸:おせちの発送を希望された方のみなのですが、発送時間に余裕がなく、バタバタとして風呂敷に包むのを忘れてしまいました。
大変申し訳ありません!
箱から取り出しにくかったかと思います。
決して経費削減ではございません。汗
以後、気をつけますのでご容赦下さいますよう宜しくお願い致します。m(_ _)m
被害に遭われた方々には謹んでお悔やみとお見舞いを申し上げます。
旧年中は大変お世話になりありがとうございました。
本年もどうぞ宜しくお願い申し上げます。
さて今回は、毎年恒例のおせちの解説をしたいと思います。
やはりといいますか、今回もかなりの値上げで仕入れが難しかったです。
ただ、昨年よりかなり値上がりした物もあれば、少し安くなった(それでも平年に比べれば高いのですが)物もございます。
本当に何でも値上がりする年末の仕入れは難しいものがあります。
[干し数の子]
大変希少なため、毎年夏が終わる頃には発注します。
干し子(通常の塩蔵の数の子を塩子といいます)と呼ばれる幻の数の子は、恐らく百貨店にもあるかないか。
干し子は国産のニシンの卵を天日で干したものです。
カチカチの状態の乾物なので、塩水を毎日交換して5日ほどかけて戻します。
戻したら薄皮を掃除し、酒で洗ってたっぷりの出汁に漬け込みます。
「数の子は音でたべるもの」と言ったのはかの北大路魯山人。
確かに数の子の良し悪しはその歯ごたえにあります。
最高級の北海道産塩子の約10倍はする干し子は最高ランクのスーパー数の子です。
[京丹波黒豆]
丹波篠山から毎年送っていただく黒豆。
当店では大粒の新豆を仕入れています。
乾物ですから、一昼夜かけて米の研ぎ汁で戻し、三日三晩極弱火で炊きます。
壁に投げてくっつくくらい柔らかくなったら、砂糖と醤油で味付けします。
砂糖は赤ザラメを数回に分けて投入。
黒豆は急な温度変化を嫌います。
シワがよらぬようコトコト弱火で煮て、空気に触れないようにします。
仕上がりには都合5日ほどかけます。
昨今は圧力鍋でサッと仕上げる方も多いようですが、私は時間が美味しくしてくれると信じています。
[イクラ]
昨秋は前半は鮭がよくとれ、筋子(イクラの原料)もたくさん出回りました。
ただ後半は急に不漁となり、鮭が不足する事態に。
川を登った鮭の卵は大きいのですが皮も固く口に残ります。
イクラを作るには、川を登る前の海にいる鮭の卵で作るのが美味です。
やや小粒ですが皮も柔らかく、ねっとりとしています。
高級珍味のイクラですが、今年も醤油漬けを盛り込みました。
[車蝦]
活けの車蝦の背わたを取り、沸騰した出汁に酒をきかせてサッと煮ました。
加熱が甘いと後々黒くなりますので、色鮮やかにしっかりと艶煮にします。
活けの車蝦も年末は特に高価になりますね。
[伊勢海老]
縁起物としてはこれほど花のある食材も少ないですね。
お祝いの席では伊勢海老か真鯛が最上です。
本場伊勢産の伊勢海老。
輸入物は色も薄く味も淡白ですが、近海物はしっかり赤い。
これも酒をきかせた出汁でやや長めにしっかりと加熱します。
プリプリした身は食べごたえがありますね。
[鮑]
活けのアワビを酒蒸しにしました。
鮑をサッと洗い、酒をふって4時間蒸し煮込みにします。
お刺身にすればコリコリする鮑も長時間蒸すことによって、驚くほど柔らかくなります。
固い鮑も良いのですが、こちらの方が万人受けして喜ばれます。
[蒲鉾]
今年もいづ萬さんから送っていただきました。
京都一の老舗のかまぼこ屋さんです。
ハモを贅沢に使った蒲鉾は、やはりお正月には食べたくなります。
味はもちろん、歯ごたえも最上です。
[唐墨]
日本近海の鯔(ボラ)の卵で作ったカラスミです。
日本三大珍味の一つの超高級珍味。
ねっとりとしてコクがあるその味わいは、酒の肴としては最上。
作り方は塩をして酒で洗い天日で干すだけなのですが、毎日裏返したり、かなりの手間ひまがかかります。
高級なのですが、毎年欠かせない一品です。
[海胆]
ウニも日本三大珍味です。
厳密に言う日本三大珍味とは、尾張の口子、野母の唐墨、越前の海胆ですが、特に年末は恐ろしく高くなります。
海胆に塩をして蒸し器で蒸します。
こちらは短時間で。
あまり蒸すと逆に固くなります。
海胆は蒸すと水分が取れてより濃厚になります。
[スモークサーモン]
特に味がよい紅鮭をスモークしました。
冷温で燻製することにより、よりサーモンの味が際立ちます。
ねっとりして風味よいスモークサーモンです。
[叩き牛蒡]
私が幼少の頃、祖母が作っていたのを覚えています。
細めのゴボウをそのまますりこ木で叩き、醤油味の煎った白ゴマで和えていたような…
ゴボウは子供には固く、ガリガリと必死に噛んでいました。
叩くと味染みが良いのですが、今の料理屋ではあまり叩きません。
食べやすく切って、味つけした煎ったゴマで和えますが、やや硬めに茹でた熱々のゴボウをゴマの中で混ぜて馴染ませます。
いつもは薄味だったのですが、今年は少し濃い味加減で存在感を出してみました。
酒の肴に一切れ…といった感覚です。
[真鯛の昆布〆]
年末は睨み鯛の需要から特に値上がりする真鯛。
養殖物なら沢山ありますが、天然物は数に限りがあります。
にらみ鯛とは鯛の姿焼きのことで、正月三が日は床の間に置いた鯛に手をつけてはいけません。
そこで三が日の間はチラチラと見る(にらむ)ことから、睨み鯛と言います。(苦笑)
話が脱線しましたが、今回は睨み鯛ではありません。
近海天然物の真鯛を捌いて柵にします。
薄塩を当てて天然真昆布で包み、ラップでくるんで冷蔵庫で1日寝かします。
昆布から出した鯛の身を、へぎ作りにするのですが、締まった身はねっとりと包丁に絡み、中々切りにくい!汗
尺一寸の柳葉包丁をいっぱいに使い、全部を切るのにかなりの時間を要しました。
しかし昆布の風味と締まった真鯛の身は、お刺身以上に味があります。
[堀川牛蒡和牛射込]
一昨年はべらぼうに高価だった堀川ゴボウ。
1本五千円はしていました。
今回は京都産が手が届く範囲で仕入れられました。
私の手首ほどもある太い牛蒡はすごい存在感です。
まずタワシでゴシゴシ洗い、ある程度の長さに切って米糠で湯がきあく抜きします。
更に熱湯で湯がいた後に出汁で炊いて味つけします。
黒毛和牛を少し叩いてすき焼き風に煮込みます。
どちらも水分を切り、堀川牛蒡の穴に和牛を詰め込みます。
定着するまで少し冷やして食べやすく切ります。
堀川牛蒡の中心には大きな穴が開いていて、そこにミンチやすり身を詰め込んだりします。
もちろん牛蒡そのものでも美味しいのですが、詰め物をするとまた違った楽しみがありますね。
[銀鱈味噌幽庵焼]
毎年焼き魚には鰆を使います。
しかし今回は初めて銀ダラを使ってみました。
味噌漬けの定番の銀鱈。
深海魚で水分が多く、味噌に漬けると身が締まって良い塩梅になります。
ただ身がもろく焼くのに神経をつかいますが、味噌漬けにすると大変美味な高級魚です。
[穴子照焼]
アナゴはよく鳴門煮にするのですが、今回は近海アナゴを照り焼きに。
穴子を開き、タレで付け焼きにしました。
[鶏松風]
鶏のミンチを二度挽きし、魚のすり身や卵などを混ぜてオーブンで焼きます。
中にはレーズン、松の実を入れて、天にはケシの実をふるのがお約束。
表面は賑やかな割に裏は寂しい、裏さみしい松風の音…と洒落てこの名があります。
[厚焼き玉子]
濃厚卵の卵黄を使い、魚と海老のすり身を混ぜた贅沢な玉子焼きです。
厚めの形に流し込みオーブンで焼きます。
[狭腰の生寿し]
サゴシとは鰆(さわら)の幼魚です。
皮ごと食するキズシは鰆では皮が厚すぎるので小さな狭腰を使います。
特に関西では狭腰の生寿しはお正月には欠かせません。
鰆類は身が弱く高鮮度が求められます。
狭腰を三枚に下ろし、ベタ塩をして水分を抜きます。
酢水でサッと洗い、昆布を入れた合わせ酢に漬け込みます。
切れ込みを入れながら一口大に切ります。
[茗荷]
ミョウガは色が綺麗なのでよく使います。
これも需要があるのか年末には値が上がります。
茗荷の固い葉を取り、サッと湯がきます。
すぐにザルに上げて塩をふります。
粗熱が取れたら一晩甘酢に漬けます。
茹でたてはくすんだ色ですが、甘酢に漬けると色鮮やかになります。
[酢蓮根]
レンコンの穴は先を見通す縁起物とされ、年末は高くなります。
蓮根にもランクがあり、最上の阿波蓮根を仕入れます。
皮をむき、酢水にさらしてアク抜きします。
厚めに切り、サッと湯がいてザルに取って塩をふります。
粗熱が取れたら甘酢に漬けます。
蓮根はアクがあると色変わりするので、なるべく良い物を仕入れます。
[カリフラワー]
料理に白い物が入ると綺麗ですね。
しかし白い物は少なく、カリフラワーは持ってこいです。
ただ、今年は割と買いやすかったのですが、すごく高価な年もあり、毎年入る訳ではありません。
カリフラワーを小さな房に切り、サッと茹でます。
他と同じようにザルに取り、塩をふって甘酢に漬けます。
爽やかな酢の物は、こってりした物が多いおせちでは箸休めになりますね。
[竹の子]
生の竹の子もやはり欠かせません。
真空パックや缶詰では香りや食感がまるで違います。
それはあの合馬のものとて同じです。
生の竹の子を米糠で湯がきます。
竹串が通るぐらい柔らかくなったら、そのまま置いて冷まします。
但し、あまり柔らかくすると竹の子本来の食感が失われますので程々に。
冷めたら皮をむき、綺麗に掃除して水にさらします。
出汁を沸かし一度目の煮炊きです。
ここで竹の子の水分と出汁を入れ替える訳です。
更に翌日に出汁を入れ替えて二度目の煮炊きです。
こうすることで傷みにくくなります。
味つけは味醂と少量の白醤油で、竹の子の持ち味を引き出します。
[冬菇]
どんことは原木椎茸を天日で干したものです。
収穫まで長い年月を要し、高価になります。
当店では丸のまま盛り込みたいので中型を使います。
サッと洗った冬菇に水をはり冷蔵庫で戻します。
よくぬるま湯で戻す方もいますが、冷水でゆっくり戻すと持ち味が生きます。
肉厚の冬菇は戻しに二日はかかるでしょうか。
椎茸の石突をとり、戻し汁と酒で煮ます。
椎茸に水分が多いので、やや濃い目に味つけし、コトコト長時間煮て味を含めます。
冬菇は肉厚で食べごたえがありますね。
[慈姑]
クワイも芽の出る縁起物とされ、年末のみ出回ります。
農家も後継者不足で廃業が多く、クワイも年々高価になります。
大きなクワイを使うと場所を取りすぎるので豆クワイを仕入れます。
クワイを綺麗に掃除して、サッと油で揚げました。
素朴な見た目ですが食べやすいですね。
[金時人参]
これも冬のみ出回ります。
細いものはお雑煮にも使います。
西洋人参に比べて赤みが濃いので引き立ちますね。
時間をかけて濃い出汁で、色を鮮やかにしたいので白醤油を使います。
[薩摩芋]
昨今は安納芋や紅はるかなどのねっとり系が人気なのだとか。
確かに焼き芋には良いのでしょうが、煮物にはホクホクした金時芋が美味しいですよね。
鳴門金時を輪切りにし、砂糖とクチナシの実を入れて甘露煮に。
クチナシの実を入れると色鮮やかに染まります。
[玉蒟蒻]
昔のコンニャクの復刻版です。
昔ながらの製法に頑固にこだわり、昔の味を再現した蒟蒻です。
独特のコリコリとした食感と、味染みの良さが特徴です。
下茹で不要とのことですが、一応湯がきます。笑
出汁を調味して、長時間煮て味を乗せます。
煮物全般に言えますが、おせちは保存性を考えて出汁の1割の酒を合わせて炊いています。
[鯛の子]
通称たいの子。
正体は生のタラコのことです。
大阪や京都では昔から生の鱈子を鯛の子と呼びます。
これも冬限定の食材で、オフシーズンは塩蔵の鱈子として出回ります。
鯛の子を食べやすく切り、流水にさらして血抜きします。
こうすると味が格段に良くなります。
甘めに調味した出汁に生姜をきかせ、崩れないように弱火で煮含めます。
ふわっとして粒がハラハラと解け、なんとも言えない食感です。
[鰊甘露煮]
今年は北海道のニシンが入ると言われたので仕入れました。
国産は珍しいですね。
鰊の甘露煮といえばにしん蕎麦を連想します。
小骨を取り除いて掃除した半乾の鰊を番茶で戻して水にさらします。
酒水を濃いめに調味し、約4時間煮込みます。
こってりとした鰊は柔らかく食べやすいですね。
[絹莢]
色合いを考えるとおせちも青い物が必要ですが、青も少ないですね。
当店では今年は菜の花とこの絹さやを使います。
絹莢も食感が大事ですからサッと茹でます。
そのままザルに上げ、粗熱が取れたらお浸しにします。
絹莢は足が早いので、一番最後の30日の朝に作ります。
[菜の花]
最後まで手こずったのがこの菜の花です。
貴重な青みと春を感じさせる野菜。
菜の花はすぐに黄色くなるので青いものが少なく、数も少ないので仕入れに手こずりました。
菜の花も足が早く最後に作ります。
そのほろ苦さは爽やかさを感じますね。
[銀杏]
イチョウの実のギンナン。
小さく手間ひまが掛かりますが、毎年入れています。
まず鬼殻を割り、更に薄皮をむきます。
綺麗に掃除したら、酒と塩で一気に煮ます。
コリっと少し苦味があり、アクセントになりますね。
[栗渋皮煮]
秋に仕込んで瓶詰めにすると安価で作れますが、当店では氷温で貯蔵した栗を年末に作ります。
渋皮煮は鬼殻をむく時に、渋皮を傷つけないように非常に神経を使います。
傷がつけば煮込む最中に崩れてダメになります。
数回アク抜きをし、コトコト長時間煮込みます。
市販のものより甘さ控えめに仕上げています。
以上。
多忙の為、写真を撮り忘れた食材が多々あります。
特に入荷が遅かった物とか…汗
今回も仕入れに苦労した年でした。
しかし普段は使えない高価な食材に触れられて、以前の料理屋の頃を思い出しながらしんどいながらも楽しく仕事ができました。
今の私にとっては夢のような時間を与えて下さり、おせちをご注文いただいた皆さまには感謝しております。
本当にありがとうございました!
追伸:おせちの発送を希望された方のみなのですが、発送時間に余裕がなく、バタバタとして風呂敷に包むのを忘れてしまいました。
大変申し訳ありません!
箱から取り出しにくかったかと思います。
決して経費削減ではございません。汗
以後、気をつけますのでご容赦下さいますよう宜しくお願い致します。m(_ _)m
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プロフィール
HN:
しきしき
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/10/08
職業:
料理家
趣味:
料理とお菓子の研究
自己紹介:
以前はこだわりの料理屋を営んでおりましたが、より沢山の方に召し上がっていただきたく、炊き込みご飯と雑菓子の店を本町にオープンいたしました。どうぞよろしくお願いいたします。
<営業時間>
11:00より売り切れ次第終了
<定休日>
土・日・祝祭日
<所在地>
大阪市中央区久太郎町2-5-18
<電話>
(06)6245-5636
<ご予約>
8:00~11:00までにお願いいたします。
<営業時間>
11:00より売り切れ次第終了
<定休日>
土・日・祝祭日
<所在地>
大阪市中央区久太郎町2-5-18
<電話>
(06)6245-5636
<ご予約>
8:00~11:00までにお願いいたします。
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