今日の献立
新年あけましておめでとうございます。
旧年中は沢山のお客さまにご来店いただき誠にありがとうございました。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

さて、今回も沢山のご注文をいただきました新春おせち。
お断りしたお客さまには申し訳なく思っております。
少し遅くなりましたが、毎年恒例の料理解説をここに記します。

今年特に感じたのは食材の高騰です。
不漁、不作といったものもあるのかもしれませんが、新型コロナウイルスの影響も見え隠れします。
特に高騰したのが数の子です。
私は国産の干し数の子しか使いませんが、市場でメインの輸入物も、便の減少等で入荷が少なかったようです。
しかし少しでも良い食材を使いたいと思い、夏頃から発注を入れて頑張って仕入れました。
ただ例年でも年末には何でも値上がりするのは致し方ありませんね。

【令和参年 新春おせち 料理解説】

〈干し数の子〉
おせちを作って30年以上。

当初からウチの数の子といえば干し子です。
干し子とは固く干した数の子のことで、真夏の北海道で天日干しして作られます。
まだ塩蔵の技術が発達していなかった頃、数の子といえばこの干し子でした。
非常に手間ひまがかかり、裏返して裏返して乾燥させて干し子になります。
年々生産量も減り、年々高価になります。
しかしその歯触りは未知の領域です。
普通の塩子(塩蔵数の子)では満足できなくなります。
ただ戻す作業とお値段からおいそれとは手を出せませんし、普通には売ってません。
なぜなら市場に出る前に無くなってしまいます。
干し子はまず柔らかく戻して使います。
毎日朝晩塩水を交換し、約5日間続けます。
完全に戻ったら酒で洗い、旨出汁に漬け、翌日また新しい出汁に取り替えます。
本来は姿で盛り込みたいのですが食べやすくカットしました。
当店目玉の干し数の子は、通常1本が1,500円はする超高級品です。



〈京丹波黒豆〉
丹波篠山産の飛切極上の黒豆を蜜煮にした煮豆です。
一年に一度だけ納屋から出してくる鉄鍋で、コトコトコトコト一昼夜かけて柔らかく煮ます。
特に鉄鍋で煮ると豆が黒々と仕上がりますね。
お待ちでなければ、錆びクギを入れても同じ効果があります。
おおよそ三日間かけて作る黒豆は柔らかくてコクがあります。
ただ、いつもは瓶詰めにしてシロップごとお付けしますが、今年は重箱の中に汁切りしてから盛り込みました。
やはりせっかくふっくらと炊いても、汁を切るとシワが出ますね。
来年はまた瓶に戻すことも検討しています。



〈いくら〉
魚卵は人気があります。
当店では塩漬けにしたり、醤油漬けにしたり、その年で変えています。
イクラはあまり大きなものは使いません。
皮がかたくなり、食感が悪くなります。
ですから北海道の鮭からとれた程よい大きさのイクラを仕入れています。

〈唐墨〉
鯔(ボラ)の卵で作った珍味のカラスミ。
日本三大珍味の一つですが、これも毎年入れています。
当店では特に300g前後の特大サイズを仕入れています。
カラスミも手間ひまがかかります。
まず塩漬けにして水分を抜き、天日で干して仕上げます。
薄皮をむいてスライスすれば、あのネットリとした舌にまとわりつく食感が味わえます。
カラスミも一腹数万円はする超高級珍味です。



〈車海老〉
熊本産の活けの車エビの背ワタをとり、酒で煮ました。
あまり炊くと縮んで固くなりますから、サッと煮ます。
エビはくるりと背中が丸くなるところから長寿の象徴です。
エビのように腰が曲がるまで長生きできるようにとの願いが込められています。



〈蒸し海胆〉
北海道の馬糞ウニを塩蒸しにしました。
先の緊急事態宣言の時にはウニの値が暴落。
一気に需要が減り、相場の半値以下まで落ち込みました。
しかし年末には恐ろしい価格に。
本来の高級品に戻りました。
ウニにサッと塩をして木箱のまま蒸し器で蒸します。
元々濃厚なウニの旨味がさらに凝縮されます。



〈鮑の柔らか煮〉
活けのやや小型の鮑をサッと洗い、酒と大根でコトコト煮ました。
強火ですと身がしまって固くなります。
極弱火で約3時間、肝ごと煮ます。
炊けたら殻から身を外し、鍋に戻して薄味でサッと煮ます。
いつもは蒸し器で蒸すのですが、今回は少し食感が欲しかったので炊いてみました。



〈渋皮栗〉
今年は山口県の岸根栗が入荷しました。
日本で最後に出てくる和栗で、特別粒が大きいのが有名です。
今回は4Lサイズの超大粒。
渋皮が傷つかないよう丁寧に鬼殻をむき、何ども湯がいて丁寧にシブを抜きます。
渋抜きできたら味つけをし、ゆっくり味を含めます。
大きすぎてお重に入りませんので、カットして盛り込みました。



〈水晶銀杏〉
愛知の藤九郎が入荷。
藤九郎は通常のギンナンの約2倍も重量があります。
ギンナンの鬼殻を割り、更に薄皮もむきます。
酒と水に塩をきかせて、中火で炒り煮にします。
ほとんど水気がなくなるまで煮込み、ふっくらと炊き上げます。
炊き上がった時は正に水晶のように輝いています。
素朴な料理ですが、ギンナンの旨さが爆発します。



〈菜の花〉
早春の菜の花をサッと塩茹でにしてお浸しにしました。
菜の花の花言葉は「快活」「明るさ」「豊かさ」「小さな幸せ」などです。
ちょっとほろ苦い菜の花を含めば春の予感がし、小さな幸せを感じます。

〈鰻冊〉
愛知のウナギを山椒を使って蒲焼きにし、浅漬けのズッキーニと和えました。
うざくをイメージし、一品としました。

〈叩き牛蒡〉
春ゴボウをサッと洗い、軽く叩いてアク抜きします。
煎った白ゴマをすり鉢で荒摺りし、味付けします。
食感を残して熱湯で湯がき、水切りしたら熱々をゴマで和えます。
一晩寝かして味を染ませてできあがりです。

〈一寸豆〉
走りの空豆をさやから出してサッと塩茹でします。
陸上げして寒風で一気に冷まします。
ちょっとしたおつまみになりますし、色が綺麗なので入れています。

〈絹莢〉
絹さやも年末には高くなります。
スジを取り除き、サッと湯がいて水切りします。
そのまま旨出汁に漬けて味を含めます。
シャキッとした食感と甘みは侮れない絹さやです。

〈梅人参〉
季節限定の金時人参をねじ梅に包丁し、梅干しと供に煮つけました。
梅形に梅味で春が感じられる一品です。

〈紫芋茶巾〉
中が紫の薩摩芋、パープルスイートを蒸して皮をむき、甘みをつけます。
潰して裏ごして茶巾にしぼりました。

〈鰆味噌柚庵焼〉
山口で水揚げされた巨大な寒鰆。
物も最高でしたが値も最高です。
身を厚めに切り、味噌と醤油、酒、ミリン等に柚子の輪切りを入れて3日間漬け込みます。
焦げないようにじっくりと焼き上げました。
やはり大きな鰆は脂のり、旨みが違いますね。



〈天鰤幽庵焼〉
氷見(富山)の天然ブリを酒、醤油、ミリンに漬け込みじっくりと焼きました。
養殖物が多いブリですが、やはり巨大な天然物はミラクルな美味しさがあります。
ブリという魚はこんなにも美味しかったのか?と思い直す凄みがあります。



〈鶏松風〉
鶏肉のミンチに山芋や卵等を練り合わせてオーブンで焼いたものです。
天にふる芥子の実が「うら寂しい松風」と、なんとも風情があります。
ちなみに松風とは海岸に吹く風のことです。

〈厚焼き玉子〉
こだわりの卵に白身魚のすり身と山芋をたっぷりと混ぜて焼いた一品。
贅沢な卵焼きといった感があります。

〈真鯛の生寿司〉
活けの明石の天然真鯛を三枚に下ろし、皮目に熱湯をかけて松皮作りに。
そのまま酢に漬けてキズシにします。
おせちは保存食ですのでお刺身は入れれません。
サッと酢で締めて保存性を良くします。



〈狭腰の生寿司〉
サゴシとは鰆の幼魚で関西のお正月には欠かせません。
舞鶴のサゴシを三枚に下ろし、ベタ塩をして身を締めます。
それから加減酢に半日漬けてキズシにします。
サゴシは幼魚なので皮ごと食せます。



〈小鮎南蛮漬〉
和歌山の小鮎をカラリと揚げて南蛮漬けに。
モロコか本シシャモの南蛮漬けを入れたいと考えていたところ、小鮎が手に入りましたのでやってみました。
川魚は腹が弱く、そのまま揚げたらお腹が割れてしまいます。
まずは一度素焼きして、それから油で揚げます。
骨まで食せるようじっくりと揚げて南蛮酢に漬け込みます。
爽やかにミョウガの甘酢漬けも盛り込みました。



〈酢蓮根〉
阿波レンコンの皮をむき、厚めに切ってサッと湯がきます。
そのまま甘酢に一晩漬けて味を含めます。
リッチな料理が多いおせちですが、さっぱりとした酢の物がお口を引き締めます。

〈新筍〉
私が絶対に入れたいのが新物の竹の子です。
今年も数が少なく、八百屋さんに無理を言って集めてもらいました。
できれば中国産や缶詰、パック物は使いたくないので産地はバラバラ。
お値段もビックリしましたが、しかし何とか確保できました。
竹の子は水分が多いので、薄味の出汁で二度炊きして味を含めます。
一足早く春を噛みしめる早堀りの筍です。





〈冬菇椎茸〉
煮物にはやはり干し椎茸ですね。
身が厚い原木栽培の干冬菇(どんこ)。
冷たい水でゆっくりと戻し、長時間煮込んでしっかりと味つけします。
冬菇は椎茸としてはかなり高価ですが、美味しいものですね。



〈芽慈姑〉
クワイは芽の出る縁起物でおせちには欠かせません。
しかし中国産が多く、国産は年々少なくなり高価になります。
なぜか見た目は中国の方が良いのですが、食べたら一目瞭然です。
六方にむき、くちなしの実で色付けし、じっくりと煮込みます。
梅人参や慈姑は剝くのに時間がかかります。



〈日の出人参〉
初日の出を思わせる金時人参。
輪切りにした人参を出汁で煮含めます。

〈海老芋〉
冬限定の海老芋は緻密で美味しいですね。
私は静岡の海老芋を好んで使います。
アク抜きした海老芋を出汁で柔らかく煮含めます。



〈本手延蒟蒻〉
昔ながらの製法でつくられたコンニャクです。
炊き合わせには蒟蒻も欠かせません。
懐かしい食感が味わえる昔蒟蒻。
蒟蒻は味が染みにくいので約3時間煮込みます。
おせちの煮物は日持ちがするように、酒を多く使って時間をかけて炊いています。

〈蓬麩〉
生麩は色味が欲しいのでよもぎにしました。
一度油で揚げてコクを出します。
生麩はサッと煮て一晩味を含めます。

〈堀川牛蒡〉
ゴボウの王様、堀川牛蒡。
約1kgもある太いゴボウは凄みがあります。
たわしでゴシゴシ洗って土を落とします。
ある程度の長さに切り、米ぬかを入れた熱湯で柔らかく湯がきます。
食べやすい大きさに切り、じっくり炊いて味つけします。
牛肉やすり身を詰める時もありますが、シンプルなゴボウも美味しいものです。



〈鯛の子〉
鯛の子を食べやすく切り水にさらして血抜きします。
丸く整形して湯通しし、水切りします。
出汁に酒をきかせ、約3時間煮て味を含めます。

〈棒鱈〉
真鱈を天日で干した究極のスローフード。
特に関西で珍重されますが、今の若い方はあまりご存知ないかと。
約半月、毎日米の研ぎ汁を取り替えて柔らかく戻します。
二三度、熱湯で湯がいて完全に戻して味つけします。
乾物ですから味が入り難く、時間をかけて煮含めます。
生にはない独特の食感は当店でも人気があります。
しかし高価で1匹1万円以上もします。



〈鳴門穴子〉
鳴門とはぐるぐる丸く巻くからで、鳴門産というものではありません。
しかし関西では多くが瀬戸内産。
韓国産も多いのですが、今回は泉州のアナゴを使いました。
泉州の穴子も良いですね!
肉厚で非常に柔らかく、とろけるような身質です。
下処理した穴子をぐるりと巻いて紐で留めます。
紐がほどけないよう、弱火でじっくり炊いていきます。
炊けたら冷まして半分に切ります。



〈白魚香梅煮〉
冬の白魚を梅を裏ごした薄味の出汁で静かに煮ます。
身が柔らかな白魚は踊らせるとボロボロになります。
炊けたらザルに上げ、静かに乾かします。

以上。

今回も沢山のご注文をいただきありがとうございました。
普段は扱えない高級食材に囲まれて心躍りました。
以前営んでいた料理屋のことも思い出しながら料理できた至福の時間をありがとうございました。

※すみません!
できるかぎり食材の写真を撮ろうと思っていたのですが、余裕がなくなり難しくなりました。
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プロフィール
HN:
しきしき
年齢:
16
性別:
非公開
誕生日:
2007/10/08
職業:
料理家
趣味:
料理とお菓子の研究
自己紹介:
以前はこだわりの料理屋を営んでおりましたが、より沢山の方に召し上がっていただきたく、炊き込みご飯と雑菓子の店を本町にオープンいたしました。どうぞよろしくお願いいたします。

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