今日の献立
新年あけましておめでとうございます。
旧年中は大変お世話になりありがとうございました。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

年末の疲れからかイマイチ体調が戻りませんが、お正月のこの気だるい感じも悪くありません。
まったりと過ごす三が日は一年で一番好きな時間です。

お店は早めにお休みをいただいておりましたが、おせちの準備で休みなくきっちり大晦日までお仕事してました。
今年もトラブルなく無事にお渡しでき、ホッとしております。

では恒例の料理解説を記したいと思います。

2017年度 おせち献立

【口取り肴】

「黒豆」
京丹波産の新豆を一晩米のとぎ汁で戻します。
割れたものを取り除き、コトコト煮ること一昼夜。
親指と小指で潰せるほど柔らかくなったらシロップと入れ替え蜜煮にします。
最後に少量の醤油で味を決めて仕上げます。
通常は重箱に入る黒豆ですが、すぐにシワが寄って固くなる性質上、当店では別添えで瓶詰めにしています。



「数の子」
今年は干し子(干し数の子)が高騰し、また数が少なく少ししか入荷しませんでした。
代用として、急きょ石狩川産の握り子(無冷凍の塩子)を仕入れました。
塩抜きした数の子を酒洗いし、鰹出汁に二度漬けしました。
塩子としては上等な握り子ですが、やはり干し子にはかないませんか?
来年に期待したいと思います。



「車蝦」
海老には近海物の活けの車蝦を使用。
クリスマスを過ぎれば高騰しますが、普通の有頭海老では格好がつきません。
数百匹の海老を一匹ずつ背わたを抜き、酒をきかせた煮汁で艶煮に。
火が入ったら一度引き上げて冷まし、再度煮汁に漬けて味を含めます。



「塩いくら」
北海道産の秋鮭の卵を塩漬けに。
今年も鮭が少なくイクラも高騰。
値上がりしか知らない世の中にはほとほと疲れてしまいます。

「唐墨」
鯔(ボラ)の卵巣に塩をして天日で干した日本三大珍味のひとつ。
今年は珍しく瀬戸内海産の鯔子を使いました。
ねっとりとした食味は最高の酒の肴。
お餅に入れて焼いても旨いです。



「鮑柔らか煮」
活けのアワビをサッと洗い、酒を入れた鍋で蒸すこと約5時間。
十分柔らかくなったら味つけし、冷まして味を含めます。



「叩き牛蒡」
新ゴボウをサッと洗い、酢水を沸かして固茹でに。
すり鉢で半ずりにした白煎り胡麻を調味し、熱々のゴボウを入れて胡麻和えに。
一晩寝かせて味が馴染んだら出来上がりです。

「栗渋皮煮」
今年は丹波の銀寄を使用。
一晩水に漬けた栗の鬼殻を剥きます。
渋皮を傷つけないように丁寧にしますが、数が多いので根気がいる作業です。
剥けたらしばらく炊いてアク抜きし、更に取り残した皮を掃除します。
もう一度アク抜きし、冷まして本炊きに。
極弱火で一昼夜。
非常に時間のかかる渋皮煮は高価なのもうなずけます。



「銀杏」
今年も特大の藤九郎銀杏を。
金槌で鬼殻を割り、更に薄皮も剥きます。
酒と塩で煎り煮にすれば水晶銀杏の出来上がりです。
銀杏も栗と並び非常に手間暇のかかる食材です。



「スモークサーモン蓮巻」
まずレンコンを薄く切り甘酢漬けに。
紅鮭を使った贅沢なスモークサーモンのスライスをレンコンに重ね、くるりと巻いたら出来上がりです。
レンコンとサーモンの相性が良い一品です。

「菜の花」
春の菜の花をいち早くお届け。
サッと湯がいてお浸しにしました。
ほろ苦い早春の香りは一番最後(30日)に作ります。

「若牛蒡」
蕗(フキ)を買うつもりが若ゴボウを発見!
いち早く使いたいとサッと薄味で炊きました。
これも春を感じますね。

「百合根」
ユリネは花に剥いても綺麗ですが、場所を取るので大葉の部分を。
肉厚で食べ応えのある大葉だけを贅沢に使用します。
サッと蒸してシロップ漬けにした上品な一品です。

「絹莢豌豆」
絹サヤも年末に高騰する野菜です。
みなさん青みに使うのでしょうか?
サッと湯がいてお浸しに。
シャキシャキとした食感がなんとも言えません。

【焼き肴】

「鰆の味噌柚庵焼」
近海物の本サワラを切り身にし、四日間柚庵地に漬けて炭火で焼きました。
当おせちに使う柚庵地はかなり薄味でじっくり漬けるには時間がかかります。
脂がのった寒鰆はやはり美味です。





「鰤の照り焼」
天然物の寒ブリを炭火で照り焼きに。
今年は例年に比べ高値でしたが出世魚のブリはやはり使いたい食材です。

「貝柱粕漬け」
帆立貝の貝柱を酒粕の床に漬け炭火で焼きました。
程よい酒の風味と貝柱の甘味が際立つ焼物です。



「厚焼き玉子」
今年は噂の卵「蘭王」を使用。
黄身の色が半端なく濃くてびっくりです。
贅沢に黄身だけを使い、すり身も混ぜてオーブンで焼いた一品。
リッチな卵焼きの極みとも言えます。

「松風」
昨年はやりませんでしたがリクエストに応えて今年は採用しました。
地鶏のミンチを主体にオーブンで焼き上げます。
沢山の具材や隠し味が満載の人気の献立です。

【酢の物】

「狭腰の生寿し」
関西のお正月には欠かせない鰆の幼魚を使った生寿しです。
生寿しとは酢で締めた魚のことですが、サバの生寿しが有名です。
塩で締めたサゴシを半日調味酢に漬けた一品です。



「真鯛の生寿し」
天然の真鯛に薄塩し、酢締めにした一品。
上品な白身は狭腰よりも薄味に仕上げています。



「蕪甘酢」
昔は菊花にしましたが、最近はサイコロ状に。
ややカリッとした食べ応えが食感も良く、程よい甘味と酸味が箸休めになります。

「諸子南蛮漬」
本モロコを素焼きにし、南蛮酢に漬けました。
小さい魚ですが、寒のモロコは脂がのっています。

「長老喜」
不思議な形をしたチョロギは毎年お願いして作っていただいております。
千代呂木とも書く縁起物で、年末しか出回りません。
サッと湯がいて甘酢漬けにしました。

【炊き合わせ】

「筍」
どうしても入れたい早堀りの筍。
今年も数が少なく争奪戦になりました。
アク抜きした筍を二度炊きして味を含めます。
筍は水分が多いため、一度煮ただけでは味染みも悪く傷みやすくなります。
小さいながらもコリッとした食感と春の香りがたまりません。



「冬菇椎茸」
原木椎茸を天日で干した本物を仕入れました。
戻すのは冷水で約二日かけてじっくりと。
昔は戻し汁を使いましたが、それだと椎茸臭くなります。
出汁も合いませんので、今は酒で炊いています。
椎茸本来の旨みと食感を出すには時間をかけて仕上げます。

「芽慈姑」
昨年は腐りが多く苦労したクワイ。
いっそ中国産でもと思いましたがやはり広島産を。
馴染みの業者さんから箱買いし、時間をかけて剥きました。
芽が出る縁起物とされるクワイは芽を折らないよう慎重に。
クチナシで色付けして再度出汁で煮込みます。
よく苦いと言われるクワイですが、私は苦いと思ったことは一度もありません。
ホクッとして芋のように美味しいクワイです。



「金時人参」
冬限定の金時人参。
梅に剥いて花を添えます。
今年は西洋人参も剥き二色にしました。
剥き物は時間がかかりますね。

「蓮根いとこ煮」
見た目が面白く、また縁起の良いいとこ煮もおせち限定です。
レンコンの穴に小豆を詰めて炊くのですが、詰めすぎると小豆が膨張してレンコンが割れてしまいます。
甘くない小豆の香りもまた良いものです。

「赤蒟蒻」
近江八幡名物の赤コンニャク。
赤いものといえばエビやイクラ、人参などがありますが、色目が面白いので赤蒟蒻を使用。
ただ味は普通の蒟蒻です。(苦笑)

「金時芋」
鳴門金時を使用。
潰して栗金団にとも思いましたが、あまりやらない丸十に。
クチナシで色付けし、面取りして甘露煮にしました。

「棒鱈」
真ダラを開いて寒風で干した古来からのスローフード。
干し数の子と並び、もはや絶滅危惧種です。
値が高く調理にも時間がかかりますので、あまりおせちにも入りません。
ただ当店のお客様にはファンも多く毎年がんばって炊いています。
米のとぎ汁を毎日交換し、約二週間かけて戻します。
煮崩れないように切り身を一つずつ竹皮でくくり、じっくりと柔らかく炊きます。
乾物ならではの旨みと食感は生の魚では出せない味です。



「松茸昆布」
昆布巻きにもバリエーションがありますが、今年は松茸を使いました。
ニシンやサケなどの魚を巻くことが多いのですが、これもよろしいかと。
松茸と昆布は相性も良く、またやりたいと思います。

「龍眼穴子」
普段は穴子だけを使った鳴門煮ですが、今回は鶉(ウズラ)の卵を芯にした龍眼に。
穴子と鶉は相性良く、美味しいものですね。
ただ、卵がすべって若干ずれた物もあり申し訳ありませんでした。

以上。

一つ一つを仕上げるのに時間がかかり、仕事はハードで普段のお弁当作りのようにはいきません。
ただ、普段触れることのない高級な食材を扱える時間は最高の一時でした。
ご賞味いただいたお客様にもお気に入りいただければこれほど嬉しいことはありません。

今年も沢山のお客様からご注文をいただきました。
作れる数に限りがあり、お断りしたお客様には大変申し訳ありませんでした。
気持ちを新たにまた次回がんばりたいと思っています。
どうもありがとうございました。
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以前はこだわりの料理屋を営んでおりましたが、より沢山の方に召し上がっていただきたく、炊き込みご飯と雑菓子の店を本町にオープンいたしました。どうぞよろしくお願いいたします。

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