今日の献立
新年明けましておめでとうございます。
旧年中は大変お世話になりありがとうございました。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

年末の疲れからか、まだ少し気だるい感じです。
当店の営業は6日(水)からとなりますので、よろしくお願いいたします。

おせちには献立をお付けしていますが、詳しい解説をここに記したいと思います。
今回は過去最多のご注文で、時間ギリギリのドタバタ劇。
大変有り難いのですが、少々きつかったです。

【口取り肴】

[京丹波黒豆]
当店は毎年1734年創業の篠山市の小田垣商店さんの新豆を使用。御店には飛切極上という一年寝かせたヒネ豆もあるのですが、私は新豆が好みです。納屋から引っ張り出してきた鉄鍋を使用。これで煮ると黒々と煮上がります。米の研ぎ汁で丸一日戻し、コトコトコトコト三昼夜。昨今は手っ取り早く圧力鍋で煮る方も多いのですが、時間が美味しくしてくれます。最後は砂糖と醤油で味付けし、当店独特の黒豆になります。この濃厚なコクと香りの為に手間暇は惜しみません!また、当店は乾燥しないよう瓶詰めでお付けしています。



[五万米=ごまめ]
最高級 舞鶴産のごまめを使用。祖母の形見の焙烙でカリッと煎ります。酒、味醂、砂糖、醤油、たまりを煮詰めて絡め、大阪やまつ辻田さんの柚七味で仕上げます。

[叩き牛蒡=ごぼう]
細目の土ごぼうの土だけを洗い流し、すりこ木で叩いて味染みを良くし、又、食べやすくして湯がきます。すり鉢に金胡麻と八方出汁、酒、味醂、醤油、砂糖、カシューナッツをすり混ぜ、熱々の牛蒡を入れて和えます。一晩寝かせれば出来上がりです。

[干し数の子]
当店の目玉の干し子。干し子は全数の子の1%以下の貴重品で超高級品です。毎日塩水を取り替え、一週間かけて戻し、酒で洗って出汁に二度漬けします。日本の海でとれた鰊(にしん)の卵を日本で加工したもので、塩子とは食べた時の食感がまるで違う異次元の世界。ウチ以外でこれを使うのは重よしさんと京味さんぐらいです。



[伊勢海老]
今年は伊勢海老が買えました。但し年末の伊勢海老は超高級品で場所も取る為三段重のみになります。鉋屑の中に入れられ活けで入荷。サイズはやや大きく重箱に入るかな?と思いましたが斜めにして何とか収まりました。身をブツ切りにし、頭の味噌を煮溶かし、酒で伸ばして西京味噌で仕上げました。姿は伊勢海老で味は車海老・・なんて言われますが、真っ当な伊勢海老はやはり美味。味も姿も王者の風格です。



[車海老]
鹿児島から活けで入荷。昔はおが屑に入っていましたが、昨今は保冷剤のみで生きています。跳びはねる中、一匹ずつ背わたを抜き、酒と味醂、醤油でサッと艶煮にしました。
背が曲がるまで長生きするように・・とのことから海老は長寿の象徴。欠かすことはできません。



[いくら]
鮭の不漁でいくらも値上がり。ずっと塩漬けでしたが今回は醤油漬けに。数の子と並び、魚卵は子孫繁栄の縁起物とされます。贅沢品ゆえ私もこの時期のみいくら丼を味わえます。(笑)

[唐墨=からすみ]
唐(中国)の墨の形に似ていたからとのご存知日本三大珍味の一つ。野母(長崎)の鯔(ぼら)の卵を使い、天日と海風で干し上げた高級珍味です。都会の汚れた空気や扇風機で作る料理人もおられますが、美味しい唐墨にはやはり海風が必要で、私はそれなりの業者さんから仕入れています。ねっとりした食感はいくらでもお酒が進みます。(私は下戸ですが・笑) ちなみにお餅に挟んでも美味しいもので、私もこの時期だけ食します。



[鮑=あわび]
これも三段重のみの商品。活けの黒鮑を掃除し、酒と大根で柔らかく蒸し煮込みにします。蒸し器で約5時間。柔らかな熱で蒸した鮑はコリコリとした生とはまた違った美味しさです。肝も添えて貝盛りに。

[渋皮栗]
今年の年末は栗が無く四苦八苦。毎年、山口の岸根(がんね)栗があるのですが、時期が遅かったか!今年は無理かなと思っていましたが、一軒だけ持っているお店が。ただ、最後の最後なので品質に責任が持てないと言われ、買った倍量を送ってくれた太っ腹の大将。さっそく剥いてみると以外や以外、見事な品質でした。渋皮を傷つけないように鬼殻だけ剥き、数回渋抜きしてコトコト煮ます。時間にして約24時間。剥くだけでもかなり時間のかかる献立で、渋皮煮が高級なのも頷けます。



[銀杏=ぎんなん]
大粒の藤九郎を使用。今回はご飯ほどの量はいらないのでやや気が軽い?とはいいましても、金槌で鬼殻を割り、続いて薄皮を剥き、最後に酒と塩で煎り煮にします。ぷっくり膨らんだら出来上がり。出来立ては水晶のように輝いているので水晶銀杏という料理ですが、日にちが経てば普通の銀杏になります。(苦笑)

[スモークサーモン]
ヒッコリーとクルミを使って約12時間スモークしたものです。サーモンは脂がのり、味、香り共に食べごたえ十分。サイコロに切ってイクラと親子和えにしました。

[菜の花]
春の食材菜の花です。菜の花は傷みが早く一番最後に作ります。例年なら沢山並んでいるのですが、今年は数が少なくどこにも無し。理由は分かりませんが、これも一軒だけ持っていました。今年の仕入れは注文しても難しく足を運んで探すこと数度。サッと湯がき、お浸しにしました。

[一寸豆]
空豆ですが、色が綺麗で摘みに良いのでここ数年入れています。L寸を買いましたがあまり大きくなかったのが残念。莢から出し、サッと湯がいて薄皮も剥きます。更に薄味で煮て味を含めました。食感も良く爽やかな一品です。



[絹莢=きぬさや]
国産の絹莢も年末には高騰します。よくある中国産に比べて小ぶりですが、柔らかく色鮮やか。塩茹でしてお浸しにしました。シャキッとした食感が美味。

[無花果=いちじく]
柔らかく戻した干し無花果を約1年赤ワインに。濃厚で食べごたえのある時間のかかる一品です。

[酢橘=すだち]
徳島の酢橘です。スライスして香りと色のアクセントに。

【焼き肴】

[鰆=さわら]
今年は良い鰆に恵まれました。お刺身にもできるほどの極上の鰆。鰆は身割れしやすく刺身にできるものは稀です。酒、味醂、醤油に漬けて柚子の輪切りを入れて柚庵(ゆうあん)焼きに。大きな鰆は脂ものって非常に美味。ちなみに当店の焼き物はすべて炭火で焼いております。

炭火の効能・・炭火の温度は約1000度にもなります。ガス火のように水分も含みませんのでカラッと焼き上がります。また遠赤効果で中から火が入りますのでふっくらとして理想的な焼き物に。何より香りが良いのが特徴です。デメリットはいこすのが厄介で非常に高価です。


[鮭・サーモン]
大西洋鮭(アトランティックサーモン)を西京味噌に漬けました。
約3日間味噌に漬け、炭火で焼きました。脂のりが良く濃厚な味わいです。

[貝柱]
帆立貝の貝柱を粕漬にしたものです。粕床に約3日漬け、炭火で焼きます。貝は縮むのが玉にキズです。(苦笑)

[厚焼き玉子]
地鶏の有精卵に白身魚のすり身を混ぜオーブンで焼き上げました。出汁巻きを入れることもありますが、食べごたえのある濃厚な一品。地鶏の有精卵は黄身の色が濃く、一切着色していません。

【酢の物】

[狭腰=さごし]
狭腰は鰆の幼魚になります。鰆は大きく皮も厚い。よって皮ごと食す生寿しには狭腰の方が適しています。狭腰もお刺身でも食せる極上品が入荷。今年は魚の当たり年です。(笑) 三枚に下し、べた塩をし、水分を抜きます。それから調味酢に約12時間漬け込みます。柔らかい味付けにし食べやすく・・。やはり関西のお正月にはこの狭腰が欠かせません。



[鯛=たい]
年末には恐ろしく高騰する明石の天然真鯛。特に私は1キロ~1.5キロのものを指定しましたので内心ビクビクでした。ただ出入りの業者さんも頑張ってくれて適正価格で入荷。捌いてビックリのこれまた極上品でした。鯛も生寿しにしましたが、こちらは味付けなしで、酢と昆布に少しの隠し味のみで。熱湯をサッとかけて皮霜作りにし、明石鯛の旨味を引き出しました。

[蕪=かぶ]
聖護院蕪をサイコロに切り甘酢漬けに。甘酢は柔らかくして二度漬けにし、更に真昆布の甘みををプラス。リッチな味付けが多い中、口中が爽やかになる一品です。

[長老喜=ちょろぎ]
なぜかお正月限定の食材ちょろぎ。生のちょろぎは土が多く、一つ一つ歯ブラシで洗います。形状が掃除しにくく時間もかかり根気がいります。サッと湯がいて甘酢漬けに。カリッとした食感が爽やかです。



【焚き合わせ】

[筍=たけのこ]
今年は暖かかったせいか筍も豊富で助かりました。福岡から入荷の国産筍。早堀りは元々高級品ですが、おせちサイズの小さいものは特に高価です。米糠を入れ大鍋でアク抜きします。皮を剥いて濃厚な出汁で二度炊きに。お味は薄めにし、春の息吹を感じられる一品です。



[冬菇=どんこ]
有機栽培の国産肉厚冬菇。生椎茸の数十倍はする高級品です。冷蔵庫に入れ冷たい水で約3日かけて戻します。それからコトコト甘露煮に。これほど肉厚なものは高級料亭の味。食べ応えのある重厚な一品です。

[慈姑=くわい]
おせちには欠かせない芽の出る縁起物。これもおせち限定の食材でしょうか?ここ数年は慈姑も高騰。何でも後継者不足で作り手が減っているのだとか。そこで台頭しているのが中国産です。八百屋さんが言うには埼玉の種を持って行き日本人が教えて栽培されているのだとか。よって見た目も味も遜色ないらしいです。おまけに値段は半額以下。ご家庭の方は国産を使うが、おせち業者はこぞって中国産を使うのだとか。私も心が揺らぎましたが、やはり広島の豆慈姑を購入。ただこれがドツボでした。年末限定の慈姑はある程度以前に収穫します。そのままダンボールで保管される為、特に今年は暖かかった時期と重なり著しく品質が低下したようです。剥いても剥いても不良品が多く、三倍量を仕入れるハメに。逆に規定内の薬品を使う中国産はビクともしません。色形良く不良品も皆無だとか。ただお味の面では国産が上・・とは思っていますが、何とも複雑な今年の慈姑でした。

[金時人参]
真っ赤な金時人参は真冬にしか出回りません。おせちの食材では赤は貴重です。ねじり梅に剥く年もありますが、今年は面取りした棒状に。サッと含め煮にしておせちに彩りを加えます。

[蕗=ふき]
実は当おせち30年近くの歴史の中でも初登場の献立です。春と言えば蕗ですが、お弁当の蕗ご飯の印象が強く敬遠気味に。(笑) 板ずりして皮を剥いて煮る・・この作業が大変なんです。サッと含め煮にした後に急冷して青煮に。ただあまり浅いと傷みやすいのでしっかりと味付けしました。

[蓮根]
阿波蓮根に内地の大納言小豆を詰めていとこ煮にしたおめでたい一品。手間がかかるので普段はできませんが、一見面白い料理です。私も初めて見た時は、一体どうやって作っているのだろう?と興味津々な調理法でした。

[蒟蒻=こんにゃく]
近江八幡名産の赤蒟蒻を取り寄せてみました。派手好きの織田信長が赤くするよう命じたといわれる赤蒟蒻。ただ味は普通の蒟蒻で、鉄分の力で赤く染めているのだとか。出汁と酒で上品に煮染めました。

[百合根]
最大サイズの百合根の大葉のみをシロップ煮に。昔は花に剥きましたが、食べにくく中の汚れが取れないので最近はこの形に。ホクッとした百合根は甘く美味しいものです。



[鯛の子=たいのこ]
鯛の子とはいいましても今が旬の鱈子(たらこ)です。助子(スケトウダラの卵)ですが、今年は大きなものが手に入りました。昨年の真子(真鱈の卵)も大きく美味でしたが、助子もこれほど大きいと食べ応えがあります。生姜をきかせて約3時間ほど炊きじっくりと味を含めました。

[棒鱈=ぼうだら]
当おせちの人気商品で、真鱈を寒風でカチカチに干したものです。干し数の子と並び、日本古来からの究極のスローフードで扱う店も少なくなりました。まず半月ほど毎日米の砥ぎ汁を替えて戻します。食べやすい大きさに切り、一切れずつ竹の皮で煮崩れないように縛ります。何度か下茹でして完全に戻し、出汁と酒で数時間炊きます。味醂を使うと固く締まるので味付けは砂糖と醤油のみで。汁がなくなるまで煮ると照りが出て美味しくなります。実はあまりの手間暇に廃止も考えましたがリクエストも多く毎年頑張っています。



[穴子=あなご]
穴子を下処理してグルグルと巻いて鳴門煮に。穴子の産地と渦潮をイメージした一品です。最近は魚屋さんにも巻いた穴子が並んでいます。ただあれは下処理せずにただ巻いただけなので非常に生臭い。楽ですが全くお勧めできません。巻いた穴子を出汁と酒で約2時間。贅沢な調味液と時間が濃厚な味を生み出します。

[白魚]
今が旬の近海白魚。近海とはいいましても白魚は汽水の湖で生活します。繊細な味は出汁と酒に白醤油で白煮にした早春の味です。

[昆布巻き鰊=にしん]
身欠き鰊を日高昆布で巻いた昆布巻きです。酒を主体に時間をかけて炊いた昆布巻きは濃厚な味わい。食べやすく一口サイズにしました。

以上。

当店のおせちは濃厚な黄金出汁と酒をたっぷりと使い時間をかけて作っています。リッチで濃厚な味わいで贅沢感を味わっていただけたかと思います。今回は慈姑以外は仕入れもしやすくやりやすい年でした。ただ数が多かったので時間がなく今回は写真も撮れず仕舞いで少し残念です。ご注文いただいたお客様、ありがとうございました!ご満足いただけましたでしょうか?
それでは、残りのお正月休みをお過ごし下さいませ。
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2007/10/08
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以前はこだわりの料理屋を営んでおりましたが、より沢山の方に召し上がっていただきたく、炊き込みご飯と雑菓子の店を本町にオープンいたしました。どうぞよろしくお願いいたします。

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