今日の献立
新年あけましておめでとうございます。
旧年中は大変お世話になりありがとうございました。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
今回は大晦日にお引き取りいただいたおせちの解説をしたいと思います。
野菜に関しましては一時の高値から開放され、例外もありますが、比較的仕入れやすい相場ではありました。
魚介は総じて年末には高騰しますがこれも例年通りのことです。
ありがたかったのは、ちょうど寒波がやってきて、食材の管理がしやすかったことです。
ただ身体にはキツかったのですが・・(苦笑)
◆2019年 新春おせち こだわりの料理解説◆
『口取り肴』
【干し数の子】
日本近海(北海道 留萌=るもい)でとれた貴重なニシンの卵を日本で作った究極の数の子です。
値も凄ければ味も凄い!
なによりその歯ごたえは普通の塩数の子では味わえません。
これは私がかたくなにこだわる一品。
かの北大路魯山人も「数の子は音で食うもの」と申しております。
ただ浜風で固く干された乾物ゆえ、戻すのに日数を要します。
【伊勢海老酒煮】
近海物の伊勢海老を氷で締め、酒と調味料で煮た一品。
活けの鮑(あわび)を酒と昆布で約3時間半蒸しました。
【鮟肝ポン酢】
鮟鱇(あんこう)は今が旬。
日本海の巨大(約10kg)な鮟鱇の肝を使いました。
中でも肝は特に珍重され、もっとも高価な部位です。
その肝を掃除して、血抜きします。
薄皮をむき、塩と酒で蒸します。
冷蔵庫で固めてカットすればアンキモの完成です。
【黒豆】
京丹波の小田垣商店さん。
私は毎年「飛切極上」を購入します。
大粒で最高品質ばかりを選りすぐった黒豆。
一年に一度、納戸から鉄鍋を出してきてコトコト煮ます。
丸二日ほどかかるでしょうか?
【唐墨】
日本三大珍味の唐墨(からすみ)。
唐墨とは鯔(ぼら)の卵巣を加工した超高級珍味です。
日本近海の鯔の卵を国内の浜風で干して作ってもらいます。
今回は一腹が約270gとかなり立派なものでした。
当店のおせちの食材では干し数の子に次ぐ高級品です。
【イクラ】
秋鮭の卵を醤油漬けにしました。
イクラは出始めは小さく、最後はかなり大きくなります。
小さいと食べごたえがありませんし、大きすぎると皮が固い。
その中間を漬け込んでいます。
プチプチとした食感は幸せを感じさせ、私も年に一度だけイクラ丼を腹いっぱい食べられます。(笑)
【車蝦酒煮】
活けの車蝦(くるまえび)の背わたをとり、酒と調味料でサッと煮ます。
生きたエビは勝手に曲がりますが、死んだものは手で曲げて楊枝で止めて湯がきます。
【栗渋皮煮】
最後に出てくる山口県の岸根栗。
ここの栗は巨大ですが、あまり大きいと半分にカットしなければ重箱に入りません。
今回はやや小ぶりなものを選びましたが、それでもでかい!
渋皮煮はその手間隙が半端なく敬遠したいのですが、リクエストが多く頑張ってむいています。
渋皮を傷つけないように慎重に鬼殻をむきます。
数が多いですから、一日仕事になります。
無事にむき終わっても、その後も時間がかかります。
さらに湯がいて渋抜きし、もう一度きれいに掃除します。
それから更に渋抜きし、ようやく本炊きです。
おおよそ18時間ほど。
黒豆と同じく柔らかくするには時間がかかります。
市販の渋皮煮が高価なのもうなずけますが、和製マロングラッセのような一品です。
【菜の花】
そのほろ苦さが早春を告げる菜の花。
何より色味が綺麗で当店では毎年使っています。
サッと湯がいてお浸しに・・
昨年は恐ろしく高騰しましたが、今年は相場で買うことができました。
【叩き牛蒡】
新物の春牛蒡(ごぼう)を使いました。
白胡麻を煎り、すり鉢に入れて半ずりにして調味します。
アク抜きした春牛蒡の歯ごたえを残して湯がき、熱々の状態ですり鉢に入れて和えます。
そのまま一晩寝かせたら叩き牛蒡の完成です。
【一寸豆】
本来はお多福豆として煮豆にしますが、毎年年末に新物が出てきますのでそのまま使います。
歯ごたえと青豆特有の旨みは、リッチな味付けの中にあって素朴で良いものです。
【水晶銀杏】
これも毎年入れている藤九郎という最大種の銀杏。
金づちで鬼殻を割り、更に薄皮をむいて酒煎りにします。
【絹莢】
特に珍しくもありませんが、年末には高騰する野菜です。
貴重な青みを生かせますし、天高く伸びる笹のイメージでもあります。
『焼き肴』
【鰆の柚庵焼】
今年も巨大な鰆(さわら)が入荷。
鰆も年末になると高騰する魚で、普段の二倍くらいになります。
本来は幽庵焼(ゆうあんやき)。
酒とミリン、醤油を混合して数時間漬けて焼きます。
【鱒味噌漬】
鱒之助(ますのすけ=キングサーモン)を西京味噌に漬け込んで焼いたものです。
【天鰤照焼】
この魚も出世魚として有名で、年末には高騰します。
一般的に流通するのは価格も安定した養殖物ですが、天然物は貴重。
特に氷見(ひみ=富山県)の天然鰤(ぶり)は1本3万円ほどになります。
今回は特別に勉強していただけたので仕入れることができました。
【貝柱粕漬焼】
帆立貝の貝柱を酒床に漬けて焼いたものです。
酒粕を酒で練り柔らかくし、3日ほど漬け置きします。
貝柱と酒粕の柔らかな甘みが美味しい焼き物で、つい毎年作ってしまいます。
【厚焼き玉子】
噂の玉子、蘭王を使った卵焼きです。
海老のすり身を入れて、贅沢に黄身だけを使いオーブンで焼き上げます。
黄色みは卵本来のもので、その味と色の濃さには驚かされます。
【鶏松風】
上面を飾る芥子の実の感じから裏寂しい松風 ...
鶏ひき肉をベースに様々な具材を入れてオーブンで焼いています。
普段のお弁当ではまったく肉類は使いませんが、おせちでは時々使います。
【蓬麩照焼】
蓬(よもぎ)の生麩を一度煮付けます。
一晩置いて味を含ませ、再度照り焼きにします。
大きめのサイコロに切り、食べごたえがあります。
※焼き物は炭火で焼いています。
約1,000度という高温の遠赤効果で、冷めても美味しい焼き物になります。
『酢の物』
【狭腰の生寿司】
生寿司(きずし)とは生魚を酢で締めたものです。
三枚に下ろして赤穂の天塩をふって水分を抜き、柔らかく加減した酢に半日漬けます。
狭腰(さごし)とは鰆の幼魚で関西のお正月には欠かせない食材。
魚体がスマートなところからこの名があります。
薄味を付けていますが醤油も合いますね。
【真鯛の生寿司】
今回も瀬戸内の真鯛を仕入れました。
もちろん天然物です。
お正月は「にらみ鯛」の需要から、取り合いになり高騰します。
天然物は上品な脂で、皮も美味しいので湯霜作りに・・
こちらも薄く塩をして、加減した酢に数時間漬けます。
【サーモン蓮根】
天然紅鮭で作ったスモークサーモンを酢蓮(すばす)で巻いたものです。
酢蓮とは酢レンコンのことで、柔らかな甘酢に漬けています。
今回はややサーモンが大きく、バランスが悪かったような ...
しかしお客さまには喜ばれたでしょうか?
【蕪甘酢漬】
聖護院蕪(かぶ)をサイコロに切り、菊花にして甘酢漬けに。
もっと細かく切れば見た目もそれっぽくなりますが、食感が失われます。
あえて荒く切った方が食べて美味しいものになります。
おせちはリッチな味付けのものが多く、酢の物を一口食べると口中が爽やかになります。
『焚合せ』
【新筍】
毎年欠かせない早堀りの竹の子です。
今年も集めるのに苦労しまして、産地はバラバラながら確保できました。
中国産なら無理せず揃うのですが、香りに貧しく固いようです。
筍は水分が多く二度炊きします。
一度炊いて一晩置き、翌日出汁(ダシ)を入れ替えて炊き直します。
筍はあまり味付けしたくないので極薄味に ...
【冬菇椎茸】
冬菇(どんこ)とは干し椎茸の種類です。
香信(こうしん)に比べて肉厚で高級。
椎茸の王様ともいわれます。
冷蔵庫で2日ほどかけて戻します。
軸を落として甘辛く煮込みます。
歯ごたえも良く濃厚で極上な椎茸煮です。
【芽慈姑】
芽が出る縁起物とされ、おせちに欠かせない慈姑(くわい)。
これも中国産が多くを締め、国産は減少しています。
主な産地は広島や埼玉で、高値で取り引きされています。
クチナシの実と一緒に下茹でし、自然の黃色みを付けます。
水にさらして出汁に入れ、3時間ほど煮含めます。
【鳴門金時檸檬煮】
昨年も我が家の檸檬(レモン)が収穫できました。
【梅人参】
むくのに時間がかかりますが、やはり花がありますね。
金時人参を梅にむき、自家製の梅干しと共に含め煮にします。
ほんのり梅の味がする名脇役です。
【鯛の子】
真鯛の子は春先のもので、今の鯛の子といえば介党鱈(すけとうだら)の卵です。
少しややこしいのですが、なぜか昔から鯛の子として売られています。
ただしこれも年末には高騰します。
特に今回のものは大きく値打ちがあるかと思います。
生姜を入れたたっぷりの出汁に下処理した鯛の子を入れて弱火でじっくり煮含めます。
【玉蒟蒻】
昔ながらの蒟蒻(こんにゃく)の味を再現した復刻商品。
玉蒟蒻を長時間煮て味を含めました。
小さいながらも存在感がある蒟蒻です。
【蓮根煮】
先を見通す縁起物とされる蓮根(れんこん)も欠かせません。
いつもは小豆を詰めたいとこ煮にするのですが、今回はシンプルな煮物に。
白醤油を使って薄味で淡い色に炊きました。
【堀川牛蒡】
京の伝統野菜の堀川牛蒡(ごぼう)。
収穫は年内までで終わります。
バットのように太く長く、1本千円ほどもします。
繊維が柔らかく味染みが良いので煮物に最適。
米糠でアク抜きしてから煮含めます。
【棒鱈】
当店でも人気の棒鱈。
棒鱈とは真鱈(まだら)を寒風で干した乾物のことです。
10日から半月ほど、毎日米のとぎ汁を換えて柔らかく戻します。
特に関西で人気の究極のスローフード。
層になった身は崩れしやすいので、一つずつ結んだ後に煮込みます。
その手間隙から干し数の子と共に年々扱う方が減っているのだとか。
【穴子鳴門煮】
真穴子(まあなご)を掃除して、ぐるぐる巻いて煮付けます。
見た目が面白いから毎年入れています。
出来上がりのコツは下処理を怠らないことでしょうか?
【子持ち鮎】
時期に処理して冷凍した実山椒(さんしょう)。
子持ちの落ち鮎を素焼きして煮崩れを防ぎます。
番茶で5時間ほど下茹でし、生臭みを抜いて骨まで柔らかくします。
番茶を捨てて一晩寝かせ、翌日酒と醤油、砂糖を使って煮含めます。
都合8時間ほどかけて炊く子持ち鮎の有馬煮です。
【金柑甘煮】
久しぶりに金柑(きんかん)を入れてみました。
金柑に切り込みを入れ、グラニュー糖で上品な甘煮に仕上げました。
その色合いからお金が貯まり金運もアップするとか?
【牛肉の時雨煮】
申し訳ありません。
献立に載せるのを忘れていましたのでここに追記いたします。
黒毛和牛に生姜と実山椒を入れて時雨煮に。
調味料は酒、ミリン、醤油、砂糖。
水分が無くなるまでじっくりと煮ます。
以上。
今回も多数のご注文を承りありがとうございました。
毎年限られた数しか作れませんで、お断りしたお客さまには大変申し訳なく思っています。
内訳はほとんどがリピーターの方でして、もう来年のご予約も多数いただいております。
内訳はほとんどがリピーターの方でして、もう来年のご予約も多数いただいております。
まったく有り難く嬉しい限りなのですが、年々作るのが厳しくなっているのも事実です。
長時間の作業と徹夜続きは睡魔との戦い。
また暖房はご法度で寒さとの戦いでもあります。
日々体調管理をし、元気な身体でまた来年頑張りたいと思っています。
お買い上げありがとうございました。
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プロフィール
HN:
しきしき
年齢:
17
性別:
非公開
誕生日:
2007/10/08
職業:
料理家
趣味:
料理とお菓子の研究
自己紹介:
以前はこだわりの料理屋を営んでおりましたが、より沢山の方に召し上がっていただきたく、炊き込みご飯と雑菓子の店を本町にオープンいたしました。どうぞよろしくお願いいたします。
<営業時間>
11:00より売り切れ次第終了
<定休日>
土・日・祝祭日
<所在地>
大阪市中央区久太郎町2-5-18
<電話>
(06)6245-5636
<ご予約>
8:00~11:00までにお願いいたします。
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